ビル・エヴァンスの左手(ソロピアノ)

ビル・エヴァンス IN YOUR OWN SWEET WAYの楽譜のサンプル映像を作りました。Alone(Again)収録の同曲の5分40秒あたりからの演奏を抜粋したものです。あちこちで言い訳しているのですが、エヴァンス本人の演奏はテンポ185くらいの速い演奏なのに対してつたない演奏で失礼します。ぜひ楽譜をご購入いただき、この動画より素晴らしい演奏を披露していただければと思います。 さて、この採譜からエヴァンスのソロピアノでのスタイルを一つご紹介いたします。 大譜表の下の譜表に注目していただくと、ところどころ左手が2声に分かれているのがわかるかと思います。このようにエヴァンスはインプロヴィゼーション中、右手のメロディを弾くパートとコード、ベースの3つのパートに分けて演奏していたようなのです。いわゆるフィンガーペダルという奏法ですね。 ラジオのインタビューで、ソロとトリオのどちらが好みかとの問いに「ソロが好きだけど自分はそこまで技術がないから」と答えていますが、いやいやいやいや、十分複雑なことをしていますよ。 まあ、ポリリズムや独特なリハーモナイズなどの難解な音楽を即興で作るだけの能力があるのだから、「そのくらいはやるよなあ」というあたりまえ感もありますが、世界に名をとどろかせたピアニストはさすが偉大です。
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エヴァン・エヴァンス氏から感謝の言葉をいただきました。

作成した楽譜は、もちろんJASRACでの許諾を得て出版しているものの、海外への輸出が可能なのかはJASRACの管轄ではありません。いろいろ可能性を探っている過程で、ビル・エヴァンスの息子さんである、エヴァン・エヴァンス氏と連絡を取り合っていました。 すでにいくつか発行しているよ、という話の流れから彼が見てみたいというので、 A House Is Not A Home、Little Lulu、In Your Own Sweet Wayの3冊を発送しました。アメリカへの郵便は時間がかかるので忘れた頃にエヴァンス氏からメールが来て、意外にもかなり喜んでくださった様子です。 本人から許可をいただいたので、スクリーンショットで紹介させていただきます。「ファンタスティック」と「ワンダフル」という単語で表現してくださっています。特にLittle Luluの楽譜を気に入ってくださったようです。そして私の方からの返答です。まさかこんなリアクションが出るとは思っていはいませんでした。ダメ元でご本人の言葉を口コミのような形で使わせてもらえないか頼みました。そうしたらOKということでした。さらに、「沖縄に行けるなら個人的に会いたい」とまで言ってくださって、光栄です。 「Made in Japan」から踏み込んで「Printed in Okinawa, ...
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ビル・エヴァンスの様に演奏する5つの方法(後編)

2011年にアメリカのキーボードマガジンに掲載された記事の和訳です。こちらは後編で、前編はこちらです。 4. 内声の動き エヴァンスがしばしば使用した内声の動きは対位法の技法を持ち込んだものでした。Ex. 4aはエヴァンスがマイナーコード上で好んで使用した奏法の例です。内声の5度の動きに注目してください。 5, #5, 6, b6, そして5へと動きます。右手は短三度インターバルの半音階上昇で、いかなるコード進行の上でも機能します。Ex. 4bは ii-V-I進行での内声の動きを示しています。 エヴァンスは16分音符と16分の三連符を最初に取り入れたジャズピアニストの1人でした。 ビル・エヴァンスの楽譜を出版しています。こちらもご覧ください。 5. ロックハンズテクニック(ブロックコード) エヴァンスはときおりジョークで自分のことを「“king of the locked hands.” 」と呼んでいました。この手法を最初に開発したピアニストは、ナット"キング"コールとジョージ・シアリングなどで、four-way ...
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ビル・エヴァンスの様に演奏する5つの方法(前編)

2011年にアメリカのキーボードマガジンに掲載された記事の和訳です。 1.左手のルートレスヴォイシング ビル・エヴァンスは独自の方法でジャズピアノのサウンドを塗り替えました。(文字通り彼の左手で!)彼のルートレス四和音はガイドトーン(3度、7度コードトーン)に加えてコードトーン、カラートーン、テンション、オルタードから成ります。これらのコンパクトなボイシングは本質的でスムーズなボイスリーディングを持っています。Ex. 1aはキーCのII-V-I進行です。このポジションはAフォームと呼ばれることが多いです。ルートの動きに慣れるために左手でルート、右手で和音を弾きます。 Ex. 1a その後、左手だけで和音を弾く練習をします。Fキーまで半音ずつ上げながら移調する練習をします。 Ex.1bは、Bフォームと呼ばれAフォームと同じ構成音ですが形が異なります。F#メジャーからBメジャーまで練習します。 Ex.1b Ex. 1cはマイナーのルートレスヴォイシングによる ii-V-i進行のA-フォームです。 Ex. 1c オルタードヴォイシングはトライトーン(増4度)が元のドミナントヴォイシングと同じです。 Ex. 1dはマイナーのルートレスヴォイシングによる ii-V-i進行のB-フォームです。 Ex. 1d 2.右手のアプローチ エヴァンスの叙情的な右手のラインの多くは、左手のヴォイシング位置の関係からキーボードの高音域に終止しました。Ex. 2aはビルがよく使っていた方法を示しています。 彼はしばしば、左手の構成音を右手のラインに使いました。 Ex. ...
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ビル・エバンス-インプロビゼーション・コンセプト

Dan Papirany氏によるビルエバンスの即興演奏概念を日本語訳したものです。まだまだ改良の余地があると思われますので、お気づきの点についてはお知らせください。 メロディーラインの変化 エバンスのメロディーラインは実によく構成されている。70年代ではそのアイディアが明確でそれぞれの長いフレーズに格差があり、簡素なものから複雑なものまで様々である。ひとたび彼の音楽を聴くと「わあ、なんてシンプルで美しいんだろう、ぜんぶ納得いくのになぜこれを思いつかなかったんだろう。」と多くがコメントする。エバンスの即興演奏概念では、あるフレーズが最初のモチーフとして次のフレーズへの発展に導き、コーラスが進行するにつれて複雑なものへと変化していく。エバンスはコーラスを多数回繰り返すことを好まず、事実音楽的な表現には2~3コーラスが十分と考えていた。また、ある演奏者のアイディアが途切れ次のコーラスへの折り返し地点に近い時は、即興演奏を終わらせるのが最良の選択肢としていた。エバンスの即興演奏には使い古しがなく即興への挿入部分にはとても風情があった。このような点からエバンスは純粋なミュージシャンだったといえるだろう。 以下は70年代のエバンスの即興演奏から取った典型的なメロディラインの例である。 1小節目は典型的なモチーフを示し、後の小節で変化していく。この五線譜でのリズムは類似しており、またそれぞれが和製的な変化をもたらしていることにはさらに注目できる。4小節目ではキーボード上の高音部での演奏に切り替えリズムが両方の五線で複雑化しているため、さらにドラマチックな効果を作り出している。 ハーモニックアプローチ(和声への取組み) エバンスのハーモニーは、他のミュージシャンに比べてとても高度である。彼はドビュッシーやラフマニノフ、ジャズではバドパウエル、チャーリーパーカー、ジョージシアリング等の影響を受けているが、管楽器のような即興演奏メロディでの影響はバドパウエルにある。ハーモニー(和声)ではジョージシアリング(ブロックコード)やジョージラッセル(モード奏法)の影響が見られる。マリアンマックパートランドのインタビューで、エバンスは偉大なジャズ演奏家すべてが影響したと断言している。エバンスの和音への取組みはクラシックとアメリカのポピュラーミュージックに起源する。1956年、彼がジャズシーンに初めて現れたときに見せた和声への取組みはとても新鮮なもので、既に自作の曲は和声的にとても高度だった。ある曲のコード進行が簡単なものである場合に、彼は自分の好みに合わせて変化させた。エバンスが2音ボイシング(発音)を使う場合のメインは3度と7度であり、モダンジャズやビバップの演奏者にこの取組みは非常に有名である。以下の例は2通りの2音ボイシングをCメジャーキーで示す。EX2aの最初と最後の和音は(ルート(根音)を除いて)3度を低い位置においている。 EX2a EX2bでは(ルートを除いて)和音を反転し最後の和音は7度を低い位置においている。 EX2b EX2cはエバンスによる2音ボイシングの用法である。この楽譜はエバンスのオリジナル曲「Orbit」の抜粋である。1小節目のコードはGm9、Fを7度、Bbを最高部においている。同じ小節で次のコードはE+7、3度を下部に置き7度を上部に置いている。2小節目の最初のコードはAm9でエバンスは再び(バドパウエルのような)標準ボイシングを使用し、7度を下、3度を上としている。 EX2c In your own sweet way(Dave Brubeck)はエバンスがよく演奏した曲である。このような曲は大抵シンプルな構成で書かれ、作曲家や演奏家はこの基本構成に別の要素を加えることで複雑化させている。この曲はAABAという4つのすセクションから成る。最初のAセクションのコード進行はAmb5/Gm/Cm/Bbmaj/Abm/Gbmaj/Cmb5/Bbmaj。最初のコードの前の3拍目と4拍目にドミナントコードを加えることでさらに面白い音を結果として得られる。Aセクション残りのコードにも同じ方法を適用できるので、結果としてコード進行はAm7b5, D7 /Gm7, C7/Cm7, F7/Bbma7, Ebmaj7 /Abm7b5, ...
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A House Is Not A Home ヴィンテージ譜 入荷

アメリカンポップスのスタンダードナンバー「A House Is Not A Home」のヴィンテージ楽譜を入荷しました。 元々この曲は1964年の同名映画の主題歌で、実在の人物の自伝を元に、その半生をベースとしたストーリーとなっています。楽譜の表紙に写っている人物は、実際の映画のキャストです。 女性シンガーのディオンヌ・ワーウィックが最初の録音を発表し、その後有名アーティストたちにカバーされてスタンダードに定着しています。特に1981年のルーサー・ヴァンドロスのカヴァーが有名で、アフリカ系アメリカ人のソウルナンバーとして愛聴されているようです、 ジャズ・ピアニストのビル・エヴァンスがカヴァーしたのは1977年、発表は1980年、彼の死後となりました。エヴァンスらしい独特なアルペジオと、美しい内声がバラードに深みを加えています。 ビル・エヴァンスの演奏を譜面に起こした楽譜を出版しています。商品紹介ページはこちらです。
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ビル・エヴァンス採譜「In Your Own Sweet Way」出来上がりました!

前回のブログ記事で紹介した楽譜の印刷が上がってきました。 ビル・エヴァンスが1975年のアルバム「アローン(アゲイン)(Alone)」に収録したデイブ・ブルーベック(Dave Brubeck)作曲のジャズスタンダード「イン・ユア・オウン・スウィート・ウェイ(In Your Own Sweet Way)」の採譜です。 演奏時間はオリジナルの録音で約9分。コーラスを全部で10回繰り返し、テーマは最初と中間、最後の計3回。小節数は365小節、全部で17ページにもなりました(同じ記譜の繰り返しがないですからね…)。その分、重量もあるので通販をするものとしては胸が痛いです。でもこの曲を採譜したかった!!名曲だし(本当はマイルス・デイヴィスのバージョンが哀愁ただよっていて一番好き)、そんなに多くの録音が残されているわけではないけど、60年代から晩年まで取り上げられていたということはエヴァンスのお気に入りだったでしょうから。 その演奏をかなりの時間をかけて楽譜に起こしたわけですが、作業を進めていく中でいろいろなことを知ることができました。9分の演奏ですから、その時間の中で本人のエモーション的な部分でかなり動きがあったであろうことが感じられました。 採譜していて特に驚かされたのはエヴァンスのリズム感覚の解釈です。基本4/4拍子に3/4、5/4、3/8などが混ざったポリリズムが随所に見られ、それらをどう書き記すのかにはとても悩まされました。演奏で再現するための見やすさを重視するか、エヴァンス本人が4/4の中でポリリズムを展開したと解釈して採譜するか、の選択の連続でしたが、多くは後者を選ぶことにしました。ひとつの例として192小節目はエヴァンスが息を吸う音が聴こえて一拍出遅れたように聞こえます。しかし195小節目でリセットして戻る、という場面があるのですが、これを意図的にやったのか、アクシデントを挽回させたのか。このような、判断は本人に聞くしかないのですが、本人がいないため想像するしかありません。 また、エヴァンスのソロピアノについて特長を述べるなら、左手の使い方を上げたいと思います。即興演奏の部分では、エヴァンスのイメージでは3つのパートが同時進行していると考えられます。右手でメロディ、左手はベースとコードが別々に展開されます。これをアドリブでやっているというのが素晴らしい。ラジオでのインタビューでは「ソロピアニストとしての引き出し(本人はDimensionと表現)がない」と言っていますがとんでもない。ものすごい技術です。 この演奏について感動したことはまだまだあるのですが、まずはこの楽譜を手に取って、演奏を楽しんでいただければうれしいです。 商品ページはこちらです。
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ビル・エヴァンス採譜「In Your Own Sweet Way」印刷中!

ようやくここまで来ました!当店出版の楽譜第3弾です。ビル・エヴァンスの演奏による「イン・ユア・オウン・スウィート・ウェイ」のソロピアノ譜が発表になります。只今印刷待ちです。 Alone(Again)に収録されたこの演奏は、約9分、360小節超、17ページにわたる大作(大袈裟^^)となっています。 コーラスは全部で10回。デイヴ・ブルーベックの名作をビル・エヴァンスの演奏で堪能していただけます。 近日発表予定です。ご期待ください!!
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ビル・エヴァンストリオ〜1961年ヴィレッジ・ヴァンガードの舞台裏

The Bill Evans Trio at the Village Vanguard, 1961 ビル・エヴァンスのキャリアの中で特に取り上げられるベーシストのスコット・ラファロとドラマーのポール・モティアン(エヴァンスはあるインタビューの中で「ポール・モーシャン」と発音していたことがあり、実際の読みについては考察の余地あり)を迎えたトリオについての記事が、2018年5月16日にアップされていました。 Portrait in Jazz, Explorations, Sunday at the Village Vanguard, ...
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ビル・エヴァンス出演ラジオ番組の音源

Marian McPartland’s Piano Jazz / Bill Evans 「Piano Jazz」はアメリカのナショナル・パブリック・ラジオ(NPR、国営放送?)の番組で、1978年から2011年まで放送されていました。ジャズピアニストのマリアン・マクパートランドが司会を務め、さまざまなピアニストを迎えてトークしている中でビル・エヴァンスを迎えたものもあり、CD化されていました。2013年よりNPRのウェブサイト上でその音源が公開されています。 Bill Evans On Piano Jazz(上にプレイヤーを埋め込んでいますが、正しく表示されていない場合はこちらをクリックしてください。NPRへのページへジャンプするので、再生ボタンをクリックして聴けます) ※リンクをクリックしてジャンプしない場合は、「Marian McPartland Piano Jazz Bill Evans」で検索してみてください。 参考になる言葉もあり素晴らしい内容なので、要点をまとめて紹介したいと思います。CDのトラック別にまとめてみました。 Waltz ...
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